希望の党は結党に際して、基本政策として5つの柱を発表しています。その中から、今度の衆議院選挙で争点となりそうなものをピックアップして、既存政党と比較してみます。

現時点の選挙情勢は、希望の党に民進党が合流しようとしていて、日本維新の会も希望の党と連携していく様子です。自民党と公明党が与党として共に戦い、共産党は従来通り独自の戦いを繰り広げることが想定されます。このため、ここでは希望vs自民vs共産として比較します。なお、現時点ではまだ各政党の公約が出揃っていませんので、これまでの党首発言などから読み解くことにします。

 

消費税

希望:消費税引き上げに条件を付ける

自民:消費税引き上げ分の使途を変更する

共産:消費税は廃止

 

小池代表は9月28日の会見で「ただ増税しては消費を冷やすのではないか。税率アップは景気条項を踏まえて進めるのが妥当だ」と発言しています。つまり、法律で2019年の増税が決まっていることについて、「景気が良ければ増税し、そうでなければ増税しない」という条件を付すべきだ、という主張です。景気が現状のままだと凍結ということのようですが、どのような条件で凍結するのかは明言されていません。

一方、3年前の衆院選は「消費増税を先送りすることについて民意を問う」ということで総理が衆議院を解散したのがきっかけであり、自民党の設定した争点でしたから、2019年の増税見送りはあり得ません。そして、今回の衆議院解散について安倍総理は「約束していた消費税の使い道を見直すため信を問わなければならない」としています。つまり、2年後は必ず消費税の税率を上げる、という前提でその使途変更について民意に問うというのが今回の解散であり、自民党もそれを公約として選挙戦を戦うでしょう。

共産党は消費税が導入される前から一貫して、消費税そのものについて反対していますので、今回も増税云々の前に消費税という制度自体に反対する見通しです。

 

原発

希望:原発ゼロとゼロエミッション社会への行程作成

自民:原発依存度は下げる

共産:即時原発ゼロ

 

原発ゼロへの工程を作成するという政策について、いつまでに実現するのか問われた小池代表は、原発が地球温暖化対策に寄与していたことを認めた上で、東日本大震災の後の処理をみると厳しいところが多いと指摘。期限については「2030年までに原発ゼロにもっていくには工程があるか検討したい」と回答しました。文字通りに読み解くと、2030年までに原発を全廃できるかどうか検討する、と言っているだけで、明確に期限を設定したわけではなさそうです。また、小池代表は前回の衆議院議員選挙の際には、原発の再稼働について前向きな発言をしていたことから、強硬な原発廃止論者ということではなさそうです。

自民党は、原発による電力の安定供給とCO2排出抑制を評価し、原発の全廃には言及していません。休止中の原発についても、安全性の確保を前提として再稼働を進める方針です。ただし、メタンハイドレードや水素、次世代再生可能エネルギーの開発を促進し、国全体での原発への依存度を下げるとの政策です。

共産党は、原発の再稼働、輸出にも反対の立場で「即時原発ゼロ」「核燃料サイクルから撤退」との政策を掲げています。

 

憲法改正(と安全保障)

希望:希望溢れる日本の礎

自民:自衛隊の明記、高等教育の無償化

共産:日本国憲法の全条項を守る

 

憲法改正について、希望の党からはあまり具体的な発言がありません。小池代表としては9条の改正まで視野に入れているようですが、記者の質問に答える形で「憲法改正は地方分権や情報公開など総合的に考えるべきだ。あまり9条にスポットライトを当てると議論がそこに集中し、むしろ視野を狭める」と回答しています。しかしながら「地方分権」が国から都道府県への権限移譲のことなのか、道州制まで見据えたものなのかなどには触れられておらず、真意が見えません。ただ、大阪府知事、愛知県知事との三者会談を設定するなど、地方分権についてはかなら前向きに取り組んでいく様子が伺えます。

また、都議会において、安倍総理の改憲姿勢について「理解に苦しむ。憲法改正が目的化していることは間違いだ」と発言していることから、批判的な立場のようです。ただ、安全保障に関連しては「基本的には憲法(改正)への対応。それは安全保障にも関わる」と発言したり、民進党から入党する議員の選別について「極めてリアルな安全保障政策についてこれるかどうかということだと思います」と発言しているため、9条を改正するか新たな項を加えるかは分かりませんが、自衛隊の明記について前向きな姿勢のようです。

自民党は結党以来「自主憲法制定」を掲げ、党内の憲法調査会でも、新たな憲法の条文について議論を重ねてきました。前回の衆議院議員選挙では(公明党と合わせて)憲法改正の発議に必要な議席を獲得し、ついに憲法改正が現実味を帯びてきました。ところが、集団的自衛権を行使するための安全保障関連法の審議や、共謀罪の審議での与野党攻防を受けて、安倍総理の憲法改正への姿勢を批判する声が高まりました。

このため、今年の憲法記念日に憲法改正に関する考え方として「9条1項と2項は堅持した上で、3項として自衛隊を明記する」「高等教育の無償化」の2つ項目に絞った上で、その時期を2020年と表明しました。この考えには党内から反対の声もありましたが、概ね了承され、今回の衆議院解散に際しても「スケジュールありきではないが、我が党は党是として憲法改正をずっと訴えてきた。今度の選挙では党の考え方を示していくことになる」と明言しています。

共産党は「日本国憲法の全条項を守る」との立場ですから、憲法改正の議論では真っ向から否定していくようです。

 

まとめ

こうして比較してみると、主要三政策について、希望の党と自民党との間の違いは少ないようです。消費税については、景気が良ければ増税し、原発も2030年までに全廃できるかどうかは工程次第です。憲法改正については自民党(安倍総理)の姿勢を批判しつつも、安倍総理が提示したの改正案よりも、さらに多くの項目の改正を考えているようです。

衆議院議員選挙は10月10日に公示されますので、それまでには各党の公約が出そろいます。各党に共通する項目を比較したり、他の党が公約に掲げていないような独自の項目にも注目して投票に備えましょう。