衆議院の解散に伴って民進党(旧民主党)に所属していた議員が霧散してしまいましたが、気になるのは政党交付金(政党助成金)のことです。総務省の資料によれば、民進党には約150億円の政党交付金が留保されているのですが、いったいどうなってしまうのでしょうか。

と言っても、そもそも政党交付金についての理解がぼんやりとしている方も多いと思います。

そこで今回は、

政党交付金とは何か、その条件や金額、問題点や使い道、そして今話題になっている民進党のそれは返還されるのかどうか

ついてまとめました。

 

Sponsored Link

 

政党交付金(政党助成金)とは何か

政党交付金とは、政党助成法という法律に基づいて、政党に交付される補助金のことです。(マスコミでは「政党助成金」と呼ばれることもありますが、これは法律の名前が由来となっているのでしょう)

そもそも、政治家の活動にはお金がかかるものですが、基本的には議員の収入は給料に相当する「議員歳費」「政務活動費」しか支給されませんので、とても足りないというのが実情です。このため、政治家は支持者の人たちから寄付を求めるのですが、個人で献金してくれる支持者は少ないため、企業からの献金に頼ることが多くなります。

ところが、営利企業が献金するからには、何らかの見返りがあると期待するのが当然でしょう。このような思惑が大きく働いたこともあり、高度成長期から平成に移り変わるころまで、ロッキード事件やリクルート事件等の大きな不正献金疑獄が発生しました。

このような贈賄事件の背景として、中選挙区制という選挙制度*によって、自由民主党内での派閥争いが激化し、その結果として政治腐敗が進んでいるとの考え方が広がりました。そこで、「政治資金の規正」「選挙制度の改革」を一体として進めることになり、1994年にいわゆる政治改革四法が成立しました。

※中選挙区制では、一つの選挙区から3~5名の当選者が出るため、選挙区内の過半数の支持を得なくても当選することができます。このため、個々の有権者に訴えるような政治活動をしなくても、業界団体や利益集団などの大きな組織の票さえ押さえてしまえば当選できるのです。このような事情から、金銭の授受を伴うような選挙運動が散見されたのでした。

 

受給の条件や金額

政党交付金を受給するための条件は、

「国会議員が5人以上所属する政党」

又は

「国会議員が1人以上所属し、直近の国政選挙において選挙区か比例区で2%以上を得票している政党」

です。

国民1人あたり250円として日本全体の政党交付金を用意し、議席数や得票率に応じて各政党に交付されます。

 

政党交付金の問題点と使い道

企業や利益団体からの献金が政治の腐敗を招いている、ということが政党助成金の出発点であったにも関わらず、これらの献金はいまでも禁止されていません。このことを理由に、日本共産党は政党交付金を受け取らない方針を取っています。(そもそも、日本共産党は個人献金の比率が高いこと、新聞を発行し、その購読料収入も多額であるなど、安定的な財源を持っているという事情にも留意が必要です。)

その一方で、この制度が発足してから20年以上が経過し、政党の運営自体が政党交付金に依存する体質になっているのではないかという指摘もあります。やはり、政治活動の原点は支持者を増やすことですし、活動費の原資は公金よりも個人からの献金の方が健全です。(政治家本人の自己資金で政治活動すべきという考え方もありますが、それだけでは金持ち政治家が有利になってしまう恐れがあります。)

 

政党交付金の使い道については、

政務活動に関することであれば「何にでも使える」

ことになっています。「議員秘書の給料」「政務参考資料の購入」に使ったと言えば聞こえは良いのですが、家族を秘書に仕立てて給与を払ってしまえば、家計の中でどう使われるかは分かりませんし、資料の内容が本当に政務活動のためかどうか等をチェックする仕組みはありません。

 

Sponsored Link

 

民進党の政党交付金の行方(返還の可能性)

冒頭にも書きましたが、民進党には約150億円の政党交付金が眠っていると言われます。もっとも、希望の党が公認を出す前日、民進党所属議員(前職、元職を含む)に対して1,500万円が支給されたりしているようですが、それでもまだ軽く約100億円以上が残っているはずなのです。この100億円は本来国庫に返還されるべきなのですが、政党交付金の制度が発足して以来、解党に伴って政党交付金を返還した例は1件しかありません。

いまのところ、希望の党からは「民進党の持っている政党交付金を希望の党が譲り受けるということは絶対にない」との発言がありますが、発足直後の希望の党にしてみれば喉から手が出るほど欲しい資金です。

希望の党が、党の公認を得て出馬する候補者に書かせたという誓約書には「希望の党の公認候補となるに当たり、党に資金提供をすること。」との一文がありましたし、今回の衆院選で公認を得た元民進党議員は、まだ正式に民進党を離党していません。当選してから政党交付金を引き出して、そのまま離党するのではないか。そんな疑いの目が向けられているのは、こういう事情があるからなのです。

 

また、希望の党から排除された人たちが立憲民主党を立ち上げました。こちらの政党も希望の党と同様に、資金ゼロでの立ち上げになっていますので、やはり民進党の政党交付金を分けてもらおうとしているようです。

しかしながら、民進党に交付されたお金の決裁権限は前原代表にあります。敵同士で選挙戦を戦う相手に資金協力するはずがありませんので、政党間での資金提供は無いと考えられています。