衆議院議員選挙が終わりました。

衆議院解散時点での予想とは全く異なる結果となり、自公で三分の二を上回る議席を確保しています。

一方の野党を見ると、希望の党は結党時の勢いがあっという間に失われ、大失速の末に改選前の議席よりも少なくなってしまい、希望の党から排除されて立ち上がった立憲民主党が予想以上の大勝という結果です。

また、排除されたりされなかったりして政党からの推薦を受けずに立候補した大物議員は無事に当選できたようです。

このような結果となって、次は「民進党は崩壊するのか?」というよりもむしろ「民進党議員は再結集するのか?」という点に関心が集まっています。実際のところ、再結集はあり得ることなのでしょうか?また、その時期はいつごろになるのでしょうか。

 

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政党間を移籍する際のルール

それでは、政党が再編する際に適用される政党間を移籍する際のルールを確認しておきましょう。

まず注意しなければならないのは、衆議院議員選挙では、「小選挙区」と「比例区」に投票しましたが、このどちらで当選したかによって、適用されるルールが違ってくるということです。

小選挙区では、投票券に「議員の氏名」を、比例区では「政党名」を書いたのは記憶に新しいと思います。つまり、小選挙区で当選した議員は、政党に所属していてもいなくても、「個人」として当選した、と捉えることができます。

一方、比例区の場合は政党が選ばれた結果、名簿の順番で当選が決まりますので、あくまで「政党に所属する議員」としての当選と考えられます。

 

このため、小選挙区で当選した議員は「個別の政治家」として、政党間を自由に移籍することができるのですが、比例区選出の議員は「政党に所属する議員」ですから、移籍には一定の制限があります。(小選挙区と比例区に重複立候補して、小選挙区で落選したものの比例区で復活した場合は、比例区選出の議員となります)

 

政党間の移籍については、比例区選出の議員は「比例区で争った相手政党に移籍すると失職する」というのが基本ルールです。このため、

「(A)離党して無所属になる」

「(B)選挙の際に公認・推薦を出さなかった政党への移籍」

「(C)選挙時点で存在しなかった政党への移籍」

「(D)選挙の際に所属していた政党が分割・合併して誕生した政党への移籍」

の4つの場合は、ルールに触れないため失職しません。

 

想定される再編パターンは3つ

それでは今回の選挙結果を受けて、旧民進党の議員が再結集するとしたら、どのような展開になるのでしょうか。

特に、踏み絵を踏まされて希望の党の推薦を受けたものの、小池代表の言動に反感を持っている議員(反小池派)に注目が集まります。

 

新党を結成する

もっとも分かりやすいのは、(C)のルールによる再編でしょう。排除の理論によって無所属で当選した野田前総理などが新党を結成して、その旗の下に有志議員が集まるという構図です。

選挙中も大物議員が全国で応援演説をしていましたから、ひと声かければある程度の勢力になることが予想されます。

 

希望の党を分割して再編

(D)のルールがありますから、希望の党が「小池派」「反小池派」の2つの政党に分かれて、反小池派の新党と立憲民主党等が合併するなら、比例区選出議員も失職せずに済みます。

ただ、党を分割するには正当な手続きを踏む必要があります。ただでさえ改選前よりも議席数を減らして窮状にある希望の党が、分割を認めるのは難しいと考えられています。

また、政党交付金の支給時期(後述)と考え併せると、反小池派にとってもリスクがあるため、選択肢としての優先順位は高くないようです。

 

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民進党に戻る

意外なことですが、今回の選挙で民進党は推薦を出していませんので、(B)のルールによって議員の出戻りが可能となっているのです。

衆議院の解散直後、民進党の議員総会で前原代表が「民進党からは推薦は出さない」と判断した一つの根拠が、このルールを活用するためだったのではないかと考えられています。

現実として、参議院の民進党議員や全国にちらばる党員たちは宙ぶらりんの状態ですし、党本部の金庫には100億円以上の政党交付金が眠っています。

 

衆議院議員選挙は終わったものの、2年後には参議院議員選挙がありますし、都道府県や市町村の選挙は随時行われています。これらの選挙で力になるのは、「選挙資金」と「地域に根差した強固な組織」ですから、このまま民進党を解党してしまうのは、政治家目線で見たらもったいない以外のなにものでもありません。

マスコミや国民から何と言われようとも、それなりの理由をつけてみんなで戻ってくるというのは、それほど奇異な選択肢ではないようです。

≪参考記事≫政党交付金(政党助成金)の条件や金額、使い道とは。返還はされる?

 

その時期はいつなのか

希望の党は選挙中にも「踏み絵」をないがしろにするような発言もあったようですので、空中分解するのは時間の問題でしょう。では、その時期はいつごろになるのでしょうか。

最集結を目指す議員は、政党交付金の算出基準となる1月1日を見据えて動いているようです。つまり、年内に希望の党を割る、若しくは民進党に戻るという選択をすることになるでしょう。

また、仮に年内に反小池派が希望の党を割って新党を作っても、政党交付金が支給されるのは来年の4月になります。

党を割るとなれば、小池派が資金協力することはありませんので、最初の3ヶ月以上は資金ゼロで活動することになってしまいます。そう考えると、反小池派にとって、党を割るという選択肢はあまり旨味が無いのかもしれません。

 

まとめ

希望の党はともかく、民進党は決してダメになっていません。

政党間の移籍ルールと政党交付金のことを考え合わせると、野党再編の時期は年内となる可能性が高く、反小池派は民進党に戻りたがっていることが分かります。

問題は、「希望の党で当選した議員が、たった2ヶ月で民進党に戻る」という点について、有権者を納得させるだけの大義を示すことができるかどうかです。

小池代表が責任を取って代表を辞任した場合に、その後に誰が代表を務めるのか。

新代表がどのような方針で党運営を進めるのでしょうか。

選挙は終わりましたが、希望の党から目が離せません。