2015年の欧州難民危機から2年近くが経過しました。

報道こそ少なくなってはいますが、今だにヨーロッパには数多くの難民が流入してきています。そしてテロが頻発するようになり、治安が悪化しました。

その結果、政治においても反難民・移民を掲げる極右政党が数多くの国で台頭し、イギリスのEU離脱の引き金にもなりました。

特に今年9月に行われたドイツ連邦議会選挙では極右政党といわれているドイツのための選択肢(AfD)が94議席を獲得するという衝撃的な報道がされました。

私たちの知らない間に、難民に寛容な姿勢をとってきたドイツでも極右政党が台頭するほどに難民問題は大きくなっていたのです。

実際に欧州ではどのようなことが起こっているのでしょうか。移民・難民問題のその後と現状について分かりやすく説明していきたいと思います。

 

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欧州難民危機から2年たった現在の状況

EU加盟28ヶ国は2016年に難民申請者710,400人(2015年比2倍以上)を保護し、約14,000人の申請を認めました。

流入してくる難民を国籍別にみるとシリア人が半数以上に及び、次いでイラク、アフガニスタンと続きます。

2015年にはドイツのメルケル首相が110万人の難民の受入れをいち早く表明し、話題になりました。

実際に難民申請が最も多いのがドイツであり、認めている人数もEU域内においてはとびぬけて多い数字となっています。

難民をEUで分配するといいう案をドイツは推奨しているものの反対する国が多く、実行にうつせていないのが現状です。

さらに欧州域内では極右政党の台頭が目立ってきており、これから難民の置かれる状況は今以上に厳しくなることが予想されます。

 

難民の流入ルートの変化

2016年3月にギリシャに流入してきた難民をトルコに強制送還するという案がEUで可決され、実行に移されています。

トルコもEU加盟に向けてとても協力的な姿勢をとっていたため、実際にギリシャルートでの難民の流入は減りました。

しかし、難民はルートを変えて欧州に入るという選択をしたのです。

流入ルートはアフリカを経由するルートへと変更され、海を渡って地中海を目指すようになりました。

難民の多くがリビアに集結し、そこから船に乗って地中海を渡ることになるのですが、海を渡るルートは遭難率が非常に高いのです。それにもかかわらず、なぜ難民は海を渡るルートを選択するのでしょうか。

その答えは国際NGOの存在です。

リビアを出てすぐに救難信号でSOSを出すことで国際NGOに救助してもらうことが目的なのです。

国際NGOは救難信号を出した船を見付けたら人道的に助けないわけにはいきません。そのため、保護した難民をイタリアに送還するのです。

犯罪組織はそれを利用してビジネスにもしており、問題視しています。

難民たちをリビアに送り返すことが出来れば一番いいのでしょうが、それは現実的に不可能な現状があります。

リビアは事実上無政府状態となっており、難民を送り返せば収容所に入れられて拷問を受けることは必至です。

また、運よく追放されて自国に帰る権利を得ても、難民は自国に帰る前に力尽きてしまうでしょう。

そうした現状からもリビアに送り返すという選択肢をとれず、欧州は難民を受け入れざるを得ない状況にあるのです。

 

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≪参考≫EUの北朝鮮への経済制裁の内容と効果をわかりやすく

 

移民の流入と欧州の限界

この現状に限界を訴えているのは、保護された難民が送還されてくるイタリアです。

毎日のように流入してくる移民・難民にイタリアは限界に達し、ついに港の閉鎖を行いました。

これは一見非人道的で強引な方法に感じられますが、やむ負えないところもあります。

シェンゲン・アキという協定に加盟しているヨーロッパの国々は「移動の自由」が保障されています。

そのため、加盟国のどこか1国で難民申請が認められれば、欧州域内のどこにでも自由に移動する権利を難民も持つことになります。

だからこそ、はじめに難民が流入してくる国の責任は重く、申請を受理するにも慎重にならなければなりません。

そのため、日々増えていく申請待ちの状況に、域内と域外を隔てるいわゆるEUの国境となっている国の負担はかなりのものとなっているのです。

 

EUが難民問題を解決するには、難民が流入してくる国々の問題を根本的に解決するか、難民の許可申請に関する制度を改正するしかないでしょう。

しかし、人道的な問題である以上、国益だけを優先した決定を行えないという点が、この問題をややこしくしてしまっているのが現状です。

 

ヨーロッパの難民問題は日本にも飛び火?

欧州では難民を受け入れてから目に見えて治安が悪化しました。

各地でテロが行われ、犠牲者も数多く出しています。

難民を受け入れないということが非人道的な行為と批判されようとも、これ以上の受入れは私から見ると危険な状態になるという懸念がぬぐえません。

実際に1度受け入れた移民・難民を強制送還している国も欧州で数多く見られます。

それを非人道的な行為ととるか、自国を守るための正当行為ととるか意見が分かれるところであると思います。

 

一方で私達の住む日本は、ほとんど難民を受け入れていない国です。

しかし欧州とSPAに合意した以上、こうした難民の受入れに関しても無関係ではいられないでしょう。

現状、一番の難民問題は日本からほど近い国であるミャンマーのロヒンギャの人々です。その人々を受け入れる国の候補に入れられたとしても不思議ではありません。

グローバル化が進展している現状、多くの国民が反対しようとも国際問題に無関係な姿勢をとることはとても難しいことです。

日本も近い将来多くの難民が押し寄せる未来が訪れる可能性は否定できません。だからこそ、今のうちに難民や移民に関する制度を整えておかなければいけないでしょう。

日本は入国に関してはとても厳しい態度を貫いていますが、一度入ってしまえば不法滞在者も野放し状態なのが現状です。

そうした不法滞在者を取り締まるための法律や機関をきちんと作り、制度を整えることこそ今政府がやるべきことなのではないかと私は思います。

政府は欧州の現状をきちんと分析・検討したうえでどのような点が問題になっているのかきちんと把握し、同じ轍を踏まないようにしなければいけません。

そうして意味でも私たちは欧州の失敗をきちんと学び、今後の日本の政策に生かしていくべきだと思います。