先日のラスベガスでの銃乱射事件は記憶に新しいところですが、これまでに、数々の悲惨な事件が繰り返されてきました。しかも、年を追うごとに被害者の数が増えています。

なぜ、このような悲惨な事件を繰り返しているのに、銃規制が進まないのでしょうか。

ここでは、アメリカの銃乱射事件と銃規制の歴史と現状、オバマの功績について取り上げていきます。

 

主な銃乱射事件

この20年ほどの間に発生した、主な銃乱射事件を振り返ってみましょう。

 

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1999年:コロンバイン高校銃乱射事件

発生時点での被害者は史上最多となる13人(うち12人が生徒)。コロンバイン高校に通う2人の高校生が、敷地内及び校舎内で次々にクラスメイトに向けて発砲し、45分間に大量殺傷を遂げてのの場で自害した。

計画的な犯行で、2人はまずカフェテリアに爆弾を仕掛け、爆発によって生徒たちが一斉に出てくるところを乱射して500人以上に手を掛ける予定だった。しかし、仕掛けた爆弾が作動しなかったため、敷地内や図書館などに移動しながら犯行に及んだ。

後に、ドキュメンタリー映画「ボーリングフォーコロンバイン」としてマイケル・ムーア監督によって制作されている。

 

2007年:バージニア工科大学銃乱射事件

コロンバイン高校銃乱射事件を上回る32名の被害者を出し、発生時点での史上最多の被害者数だった。

バージニア工科大学4年生のチョ・スンヒ(韓国籍でグリーンカード所持)が、学生寮で男女2名に手を掛ける。その後大学校舎に移動し、教授と学生を教室に閉じ込めた上で銃を乱射し、その場で自害した。

 

2012年:サンディ・フック小学校銃乱射事件

小学生20名と成人女性6名の合計26名が亡くなり、犯人は自害、その母親も銃によって亡くなった事件。

犯人のアダム・ランサは、事件当日の早朝に自宅で母親を手に掛け、小学校に移動して犯行に及んだ。犯行に用いられた銃は全て母親名義の物であり、母親は事件現場に併設された幼稚園に勤務していた。

この母親によって精神病院へ入院させられそうになっていたことが直接の犯行動機と考えられているが、犯人死亡のため詳細不明のまま捜査が終結している。

 

2016年:フロリダ銃乱射事件

今年のラスベガスでの銃乱射事件が発生するまでは史上最悪の49人が亡くなった事件。アフガニスタン系の両親を持つ男が、ゲイナイトクラブで自動小銃を乱射して49人を手に掛け、店に立てこもった。数時間後に特殊部隊が突入し、犯人を止める。

犯人のイスラム原理主義への傾倒や、同性愛への嫌悪が犯行動機と考えられるが、詳細は不明。

 

近年の銃規制

これらの大きな事件が発生するたびに、銃規制を求める声が上がりました。州によっては規制が強化されましたが、逆に凶悪事件に対抗するために必要という考え方から、所持の権利を強化した州もあるようです。

完全に銃の所持を禁止することはありませんでしたが、連邦政府レベルでの銃の販売に関する規制は2回制定されました。

 

ブレイディ法

最初の銃規制はクリントン政権下の1993年に成立した「ブレイディ法(この名前は、1981年に発生したレーガン大統領暗殺未遂事件の際に被弾して大きな障害を負ったブレイディ大統領補佐官に由来します)」と呼ばれるルールです。

規制と言っても単純な内容で、

「銃を購入する際には5日間の猶予を設ける」

というだけのもの。この5日間で販売店は警察に対して過去の犯罪歴を照会することが義務付けられました。照会の結果、前科者・麻薬中毒患者・精神病患者・未成年に該当する場合は販売できないという規制です。

 

このように単純なブレイディ法でさえ、5年間の時限立法だったので、5年ごとに更新の手続きをしなければなりませんでした。最初の更新1998年には、規制対象をライフルや散弾銃まで広げながらも、5日間の待機期間は無くなり即日許可が可能とされてしまいました。そして、二回目の更新期限である2004年には、法律の更新手続きが行われずに失効してしまったのです。

また、ブレイディ法と前後して制定されたアサルト・ウェポン規制法(攻撃用兵器である半自動小銃の販売禁止)が成立しましたが、やはり2004年に失効しています。

 

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≪参考≫

アメリカの銃社会は怖いのになぜ続く?実態と歴史的背景

 

オバマ大統領の規制強化

2012年のサンディ・フック小学校乱射事件を受けて、オバマ大統領は銃購入者の身分照会を強化するための法律を議会に提出。

しかし議会はこれを否決し、やはり規制は強化されませんでした。

それでも2016年1月、オバマ大統領は

「銃の販売業者すべてに販売免許の取得を義務づける」

「殺傷力の強い銃を購入した人物の犯罪歴確認を徹底する」

 

という大統領令を発します。

このときの会見でオバマ大統領は

「行動しないために言い訳を続けるのは止めなくてはならない」

と涙を流しながら訴えました。この会見の様子は日本のニュースでも流れましたので、覚えている人も多いでしょう。

しかしトランプ大統領が2017年に就任し、オバマ政権下で発せられた大統領令は全て破棄されてしまいましたので、この規制は現在実施されていません。

 

今後どうなるのか

先日のラスベガスでの銃乱射事件では、セミオートの機関銃を連射可能に改造することで、殺傷能力が上げられていました。

この改造パーツ(バンプストック)を利用することは、「護身用」の概念を著しく逸脱するため、今後規制対象となる可能性が高いと考えられています。

史上最悪という記録を上塗りし続けてきたアメリカですが、今回の事件もかなりの衝撃を与えました。これで全く規制が強化されないようだと、今後も規制が進むことはないのではないか、という意見が多いようです。