昨年の都知事選挙で台風を巻き起こした小池百合子都知事が、この度の衆議院解散を受けて新党「希望の党」を創設し、代表に就任しました。

今月投開票が行われる衆議院議員選挙ではこの希望の党の動向が大きく注目されています。そこで今回は、新党への現時点の主要メンバー三人をチェックし、今後の展望を予測していきたいと思います。(以下、敬称略。なお、現時点では衆議院が解散したため、解散までの現職議員については「前衆議院議員」としています)

 

主要メンバーはどんな人?

希望の党の中心メンバーは、なんと言ってもこの3人です。それぞれのプロフィールと、結党までの政治動向を確認してみましょう。

 

Sponsored Link

 

小池百合子都知事

昨年行われた都知事選に際して、それまで所属していた自民党を「清水の舞台から飛び降りる覚悟」で離党(衆議院議員の地位も自動的に失職)して立候補。自民党の推薦を受けなかったために苦戦が予想されたものの、「都議会のドン」を始めとした既存の利権を追求する姿勢が多くの有権者の支持を集めて当選。

地域政党「都民ファーストの会」の代表に就任し、都民第一主義の元に築地市場の豊洲への移転を凍結するなど、様々な政策を実行。今年の都議会選挙では、都議会公明党の選挙協力を得て、過半数の議席を都知事派として確保、都議会での主導権を得ました。

今回の衆議院解散については「日本に物があふれているが足りないのは希望だ。経済、政治、暮らし、家計、教育への希望、全てに通じる希望をしっかりと訴えたい」と表明して希望の党を結党し、初代代表に就任。その背景として「日本、東京をリセットしないと世界の激動、潮流に日本が置いてきぼりになる」として、そのためのアクションを起こしたと説明しています。

 

若狭勝(前衆議院議員)

元検察官で東京地検特捜部副部長、公安部長を歴任。その後弁護士として活動しながら政治家に転身。2013年の参議院議員選挙に自民党から出馬し、落選しましたが、翌年の衆議院議員選挙において、比例区で初当選。2016年の都知事選挙で、自民党公認の増田寛也を応援せずに選挙戦当初から小池百合子を応援したため、小池代表の側近中の側近と言われています。

都知事選後には自民党幹事長から厳重注意を受けましたが、小池都知事の衆議院議員失職に伴う補欠選挙には自民党公認候補として出馬して当選。自民党に所属しながらも小池都知事と行動を共にし、2017年の都議会議員選挙を機に自民党を離党、都民ファーストの会を支援する立場に。9月27日の希望の党設立に際しては結党メンバーとして参加し、会見では小池代表の隣に座るなど、依然として側近としての地位は硬いようです。

 

細野豪志(前衆議院議員・元環境大臣)

京都大学を卒業後、三和総合研究所に勤務。2000年の衆議院議員選挙に民主党から出馬して旧静岡7区で初当選し、今回の解散まで衆議院議員を6期務めています。2011年6月の内閣改造でで内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)として初入閣、同年、野田内閣の発足に伴い環境大臣に就任。

同年の衆議院解散で民主党が政権の座から降りた後は、党幹事長、党政策調査会長などを歴任しました。2016年の党首選挙では蓮舫を支持し、蓮舫代表の元では党代表代行を務めていました。

ところが、今年4月に雑誌「中央公論」誌上において憲法改正試案を発表し、党の憲法改正の姿勢を批判。蓮舫代表はこれを「最低だ」と評し、結果として細野は党代表代行を辞任することになりました。そして今年8月に「新たな政権政党をつくる」として離党届を提出。この頃から若狭の動きに注目していること、先に党を離れていた長島昭久との連携などを示唆していましたが、9月27日の希望の党設立と同時に合流。会見では若狭と共に小池代表の隣に座り、党の顔としての評価を受けています。

 

この他、9月27日の結党時点では、若狭・細野以外の現職国会議員として、前衆議院議員9名と参議院議員3名の14名で発足しました。

このうち細野派(自誓会)に所属していた後藤祐一、笠浩史、鈴木義弘のほか、民進党からは松原仁(民社会)、木内孝胤(松野派)、横山博幸(松野派)が所属するなど、細野を含めて7名が民進党からの移籍組。自民党からは内閣府副大臣を務めていた福田峰之が合流。今年4月に民進党を除名され、無所属となっていた長島昭久、無所属の野間健、そして若狭を合わせて11名が現職衆議院議員でした。

発足時の参議院議員は、日本のこころを大切にする党の党首だった中山恭子、無所属クラブの行田邦子松沢成文の3名が所属しています。

 

Sponsored Link

 

今後の動向

今後の注目ポイントは、選挙戦を経てある程度の議席を得ると思われる希望の党が、衆議院での代表に誰を選出するか、という点でしょう。

見落とされがちな事ですが、小池代表は国会議員ではありませんので、国会で行われる党首討論に参加できません。このため、松井大阪府知事が代表を務める「日本維新の会」も、片山虎之助を共同代表として党首討論に挑んでいます。

党首討論は予算委員会と同様にNHKが全国生中継しますので、ここに党首が出られないようでは国民に対してアピールができません。このため、選挙後に国会が召集されるまでには共同代表を選出するものと思われます。

では、誰が共同代表を務めるのでしょうか。

選挙での貢献が評価されるでしょうから、今から確定的なことは分かりませんが、現時点で小池代表に次ぐ地位にいるのが若狭・細野の両名であることは間違いありません。

若狭は、まだ当選2回と経験こそ浅いものの、小池代表が都知事選に打って出たときからの盟友です。当時の小池代表は自民党の公認が得られないまま都知事選に立候補したため、自民党からは「小池を応援した場合は除名などの処分対象になる」との警告まで出ていましたが、この警告を無視して真っ先に応援に駆け付けたのが若狭でした。いわば、小池代表にとっては希望の党をゼロから立ち上げた盟友であり、最高の評価を受けているようです。

 

一方の細野豪志は、当選6回で政治家としての手腕は若狭を圧倒的に上回ります。また、まだどうなるか分からない状態の新党の発足に際して、民進党から3人の仲間を合流させました。

新党の結党にあたって、最初の重要なポイントは「5人以上の現職国会議員」を確保すること(政党交付金を受けるため)ですから、本人を含めて4人が一緒に行動できるというのは、大きなインパクトがありました。また、過去に2回の閣僚経験があるため有権者の知名度も高く、党の顔として起用するのであれば、若狭よりも一枚上だろうとの評価があります。

いずれにせよ、共同代表の選出は総選挙が終わってからのことになりますが、今から始まる選挙戦を、このような視点で眺めてみるのも面白いかもしれません。