最近は日本経済が好調で「いざなぎ景気を超えた」という報道がありました。その一方で、景気の良さを実感している人は多くないようです。

わたしたちの実感とは関係ないところで「景気が良い」と言われているのでしょうか。そもそも景気とは何なのか、主な経済指標の種類と特徴、見方とともに確認してみましょう。

 

GDP

経済指標の王様は、なんと言っても「GDP」です。GDPとは、日本語では「国内総生産」という概念で、1年間に日本国内で創出された「付加価値」を金額で表したものです。

その計算方法は国連の統計委員会で定められた「SNA(System of National Accounts:国民経済計算体系)」に基づくものです。このため、世界各国の経済規模を同じモノサシで計って比較することができるのです。

日本では、四半期ごとのGDP速報値がQE(Quarterly Estimates)として公表されています。直近の四半期の成長率を年率に換算して、マスコミでは「年率換算で〇%の成長」などと取り上げられます。

QEは、様々な基礎統計から計算されているため、それらの基礎統計が揃ってからでなければ公表できません。このため、速報性で劣っているというところが欠点ですが、比較的早く公表される統計を用いて、当該四半期の終了後 1 ヶ月半程度で「 1 次速報」を、 2ヶ月+10日程度後に「2 次速報」を公表することにより、なるべく早く、正確な情報提供をしているようです。

 

≪GDPの計算方法はこちら≫

GDPとは。計算方法と例題、実質と名目の意味をわかり易く

 

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月例経済報告

日本政府が公表する景気が良いかどうかの「景気判断」は、内閣府が毎月公表している月例経済報告で示されています。

この月例経済報告の基調判断において

「景気は、緩やかな回復基調が続いている。」

といった総括判断が記された上で、各分野別に

「個人消費は、緩やかに持ち直している。」

などのように記され、設備投資、輸出、生産、企業収益、雇用情勢、消費者物価のそれぞれについて景気判断が示されます。

併せて、短期的な見通しを

「先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。」

のように、端的に示されます。

また、報告書の文中では、それぞれの分野の判断根拠について、統計の数値などを示して解説されています。国内の足元の景気については、月例経済報告を確認すれば、概ね理解できるようにまとめられているのです。

 

日銀短観

日本銀行が四半期ごとに調査・公表する「企業短期経済観測調査」のことを日銀短観と呼んでいます。日本独自の経済指標ですが、海外のマーケット関係者の中でも「TANKAN」と言えば通じるくらい、日本における代表的な経済指標となっています。

調査対象は大企業から中小企業まで20万社以上、調査内容は企業の業況判断や製品の需給・在庫・価格判断、雇用、設備投資、金融など広範囲ですが、最も注目されるのが「業況判断」です。

業況判断とは、企業の経営者が考える景況感のことで、「景気が良い」と考える経営者の数から「景気が悪い」と考える経営者の数を引き、その差が「業況判断指数」として公表されるのです。

 

日銀短観はアンケート調査であるにも関わらず、100%近い回収率となっているので信頼性も高く、直感や主観な部分も確かにあるとは言え、日本全国の経営者自らの判断です。そのため、現時点での企業活動の様子を率直に反映する指標として、高く評価されています。

 

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景気動向指数

日銀短観の業況判断指数は、言わば「企業経営者の業況判断」による多数決ですが、景気動向指数「国内の経済指標」で多数決を取る指数です。

採用されている経済指標は、生産や雇用などの経済活動において重要で景気に敏感に反応する指標が採用されています。景気を先取りする「先行指数」と、景気動向と同じような動向を取る「一致指数」、そして景気よりも遅く振れる「遅行指数」の3つの指数に分類されます。

景気に先行すると言われると不思議な感じがしますが、これは経営者の立場で考えてみると分かりやすいかもしれません。

例えば、経営者が「これから先は景気が良くなりそうだ」と考えた場合、工場を拡大して生産量を増やそうとします。この際には大きな機械を導入しますし、雇用を増やすために経営活動をするでしょう。このため、「機械受注統計調査」「雇用統計(新規求人数)」といった指標は、景気よりも早く動く傾向があるのです。こちらが先行指数の例になります。

反対に、「家計消費支出」「法人税収入」といった指標は、景気よりも遅れて動く傾向があります。こちらが遅行指数の例になりますね。

 

景気の山谷とは

今年9月の月例経済報告が公表された際、茂木経済財政担当大臣は

「戦後2位のいざなぎ景気を超えた可能性が高い」

との認識を示しました。いざなぎ景気とは、昭和40~46年の57ヶ月に亘る景気拡大局面で、期間の長さだけではなく、その拡大規模も大きかったことで知られています。

一方、今回の景気拡大局面は、期間こそ長いものの、大きく経済成長したとは捉えられていません。この「いざなぎ景気」のような景気の拡大・縮小はどうやって決められるのでしょうか。

月例経済報告は、「ゆるやかな回復基調」とか「やや足踏み」等の文学的な表現を用いるため、景気の山や谷を判断するのは難しそうです。また、日銀短観は日本中の経営者の思惑が入り乱れているため、業界ごとに景気に先行したり後追いだったりして、これも判断の根拠として用いるのは難しい部分があるのです。

このため、景気の山谷については、景気動向指数の一致指数を用いて計算されます。

この計算、判断を担当するのが内閣府に設置される「景気動向指数研究会」で、景気の山谷を判断するのと同時に、最新の経済指標を吟味しながら景気動向指数で用いる経済指標の見直しも行っています。

 

まとめ

日ごろ、何気なくニュースで流れている経済指標のニュースですが、それぞれに特徴があり、日本経済の現状を表しています。

それぞれの指標の特徴を理解して、生活の中でも景気の良し悪しを考えてみるのも面白いかもしれませんね。