戦後の高度経済成長を経て、日本は世界で第二位の経済大国になりました。この「第二位」というのは、GDPが世界で第二位ということです。最近では、中国に世界第二位の座を奪われたような報道もあります。では、このGDPとは何でしょうか?

ニュースではよく聞きますし、中学や高校で教わった言葉ですが、ここではGDPとは何か、その計算方法と例題、実質GDPと名目GDPの意味の違いをわかり易くまとめましたので、ぜひ参考にして頂けたらと思います。

 

GDPとは

GDPとは、国内で生産された付加価値の合計(頭文字を取ったGross Domestic Productの訳)のことで、国連統計委員会の定めたSNA(System of National Accounts)に準拠して計算されています。国全体のGDPを計算するのは大変なのですが、ここでは最も簡単な経済モデル(農家、粉屋、パン屋)で確認してみましょう。

 

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GDPの計算方法と例題(基本経済モデル)

まず、農家さんが小麦を100円分収穫します。その小麦を、粉屋さんが仕入れて製粉し、200円の小麦粉を製造します。その小麦粉をパン屋さんが仕入れて、300円分のパンを製造します。さらにこのパンを、農家さんが100円で買って食べ、粉屋さんも100円で買って食べ、パン屋さんも100円分のパンを食べるというモデルから、GDP(付加価値の合計)を計算してみましょう。

まずここで、パン屋さんとしては農家さんと粉屋さんに合計200円分のパンを販売し、残りの100円分のパンを自分で食べました。これを「自家消費」と言い、パン屋さんの中で100円の「販売(収入)」と「消費」が同時に成立しています。(ある人が自分で作ったパンを隣の人に100円で売り、隣の人が作ったパンを100円で買うといった取引と同じことです。)

そして付加価値としては、農家さんは小麦を100円分の収穫(付加価値)粉屋さんは農家さんから100円分の小麦を仕入れて200円分の小麦粉を売っていますから、生産した付加価値は100円分です。パン屋さんも同じことで、200円分の小麦粉から300円分のパンを製造しましたから、100円分の付加価値を生産した、と考えます。(粉屋さんにとっての小麦、パン屋さんにとっての小麦粉を「中間投入」と言います)

 

三面等価の原則

実は、GDPの計算では、「生産」「分配」「消費」が全て等しくなるという特徴があります。それでは次にそれぞれの経済活動を「生産」「分配」「消費」の面から確認してみましょう。

まず生産ですが、農家さんは100円分の小麦を生産(収穫)、粉屋さんは100円分の小麦を仕入れて200円分の小麦粉を販売しましたので、100円分の付加価値を生産、パン屋さんも200円分の小麦粉を仕入れて300円分のパンを製造しましたので、100円分の付加価値を生産しました。それぞれの主体の付加価値を合計すると、農家さん100円+粉屋さん100円+パン屋さん+100円=300円となりますので、「総生産額は300円」ということになります。

分配とは、所得や収入という意味です。農家さんは100円の小麦を販売したので100円の所得、粉屋さんは小麦粉で200円の売り上げがありましたが、小麦の仕入れで100円使っていますから100円の所得、パン屋さんは300円分のパンを販売し、小麦粉の仕入れで200円支出していますから、100円の所得とういことになります。
合計すると、農家さん100円+粉屋さん100円+パン屋さん+100円=300円となりますので「総所得は300円」ですね。

消費はどうでしょうか。農家さんも粉屋さんもパン屋さんも、100円分のパンを消費していますから、「総消費額は300円」です。この際、小麦粉の原材料である小麦や、パンの原材料の小麦粉は中間投入なので消費にはカウントしません。このため、SNAに計上する消費のことを「最終消費」と呼ぶ場合があります。

このように、経済活動の様子は生産・分配・消費の側面から見て、どれも同じ金額になるため「三面等価の原則」と言われています。
実際にGDPの推計をする場合、国によっては生産統計は制度が高いが、消費統計は整備されていない等の事情があります。このような場合でも、もっとも信頼性の高い統計を利用することで、より正確なGDPを把握することができるのです。

 

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[戦後三大景気とは何か]

 

実質と名目の意味

GDPのニュースでは、必ず「名目GDP」とか「実質GDP」という言葉が出てきます。この「実質」と「名目」とは何のことでしょう。

先に答を書くと、

「実質は価格変動を除いたもの、名目は価格変動も込みのもの」

ということになります。

たとえば、平成27年のリンゴの生産・販売額が100万円だったとしましょう。そして、平成28年の生産・販売額が120万円だった場合、この1年間の名目GDP成長率は20%ということになります。ところが、生産・販売の内訳を確認したら、平成27年は100円×1万個、平成28年は120円×1万個だったという場合、実質GDP成長率は0%ということになります。

このように、名目GDPは物価水準を考えない計算方法で、実質GDPは物価水準も考えての計算方法になるのです。

ですから名目GDPだと、たとえ数字が上がっても、それは単純に物価水準が上昇したためであって、本当の意味での経済成長を意味していない可能性が高くなります。

たとえば日本の場合、バブル崩壊後は物価下落(デフレーション)が進みましたので、名目GDPはほとんど成長しませんでした。しかしながら、実質GDPは基本的には成長傾向が続いていて、経済は着実に成長しているのです。

ただし、物価が全体的に下がると世間は不況を連想するので、消費が鈍ってしまい、経済も滞る流れになりがちではあります。

 

まとめ

どうでしたか。分かっているようで、ちゃんと説明するのが難しいGDPですが、三面等価となることと、価格変動のことを覚えておけば、そんなに難しいものではありません。計算方法も理屈も、思ったより簡単だと感じた方も多いのではないでしょうか。

ニュースでGDPという言葉が出てきたときは、基本に立ち返って思い出してみましょう。