アメリカと北朝鮮の緊張関係が続いています。

「開戦は秒読み状態だ」

と主張する人もいたりして、この状況に対し不安を感じている国民は非常に多いことでしょう。

では、実際のところはどうなのでしょうか。

ここでは、米朝戦争の可能性と考えられるシナリオ、日本の被害をまとめていきます。

 

米朝戦争の可能性と考えられるシナリオ

テレビのワイドショーや週刊誌では一触即発のように報道されていますが、対立が高まっているというだけでは戦争にはなりません。

お互いに具体的な被害を受けたら反撃しますが、言い合いをしている段階では戦争にはならないのです。すなわち、米朝開戦の可能性があるのかを考えると、現状は

「無いとは言えないが可能性は低い」

という状況です。

では今後の可能性はどうでしょうか。少し考えてみましょう。

 

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北朝鮮から攻撃の可能性

もし、北朝鮮がアメリカの領土にミサイルを撃ち込んだなら、アメリカはすぐに反撃して、北朝鮮は数日で壊滅するでしょう。

撃ち込むどころか、発射した段階で反撃が始まるかもしれません。さすがの北朝鮮もそのことは理解していますから、ミサイルをテストする際にも、米国領土に被害が出ないように日本上空を通過させているのです。

つまり、北朝鮮からアメリカに対して先制攻撃する可能性は限りなくゼロに近いと言えます。

 

アメリカからの攻撃の可能性

では、アメリカから北朝鮮への先制攻撃はあるでしょうか。かつてアメリカはブッシュJr.が大統領だった頃、イラク戦争を引き起こしたことがありました。

あの時は、イラクが持っていた大量破壊兵器を破棄したかどうかが確認できないこと等、国連安保理の決議が守られていないことを理由にして、有志連合を結成した上で戦争を始めたのです。

結局、ブッシュ大統領の主張していたイラクの大量破壊兵器は発見されず、イラクの治安が悪化するだけで、それが911の遠因となったと分析する向きもあります。

現在、北朝鮮が核兵器を所有していることは明らかですし、ICBMの飛距離も順調に伸びています。かつてのイラクのような「所有疑惑」というレベルではありませんから、今回も国連安保理の決議に基づいて開戦する可能性はあります。

 

ところが、国連安保理の決議が成立するためには、15か国の理事国のうち9か国以上の賛成が必要で、かつ米英仏中露の常任理事国が拒否していな場合に限られます。つまり、決議の成立に際しては常任理事国の動向が重要になります。

このことを念頭に置いてイラクと北朝鮮を比較すると、最も大きな違いとして挙げられるのは「常任理事国と国境を接している・いない」という点です。

北朝鮮は中国と国境を接しています。

米朝の武力の差は圧倒的ですから、仮に戦争となれば北朝鮮はあっという間に壊滅状態になります。そうなれば、国境を越えてたくさんの難民が中国に逃げ込んでくるでしょう。それは中国にとって大きな負担となりますし、絶対に避けたいと考えています。

 

このため、いくらアメリカが躍起になっても、国連安保理の決議に基づくような開戦は可能性が低いと考えられます。

ただし、北朝鮮が核兵器とICBMを所有していることは間違いありませんから、今後は核兵器の査察を受けることと、廃棄のための手続きを進めることについて、国際社会からの要求が強まっていくことは間違いないでしょう。

そのための国連安保理決議1718は2006年に成立していますので、これからもアメリカから提案される制裁決議が強化されていくことになるはずです。

 

中国が手を下す可能性

中国の立場で考えると、米中開戦は好ましくないものの、現在のような緊張状態が長引くのもやっかいなことです。実際に、北朝鮮の脅威を理由として、韓国内に米国のTHAADミサイル(最新鋭の迎撃システム)が配備されていますが、実際には対中国を想定して配備したと考えられているのです。

つまり、北朝鮮をもっと安定的な政権が支配してくれるのであれば、現体制にこだわりはしません。ですから、戦争によらない形での独裁体制の終焉ということは有り得るでしょう。実際に手を下すのがアメリカなのか中国なのかは分かりませんが、どちらにとっても影響は甚大ですから、実施時期については事前にすり合わせている可能性が高いでしょう。

 

だとすると、そのタイミングはいつになるのでしょうか?

一つの目安として考えられるのは、今年11月に中国で全国人民代表大会(全人代=中国の国会に相当する機関)が開催されるということです。

今年の全人代では、中国共産党の主要幹部の人事が決定されますから、それまでの間は中国国内の安定的な状態を継続しなければいけません。

戦争でなくとも、北朝鮮の独裁体制が崩れれば北朝鮮国内は不安定な状態になるでしょう。

不安定な北朝鮮から、経済発展を続けている中国を目指して国境を越えて難民が押し寄せてくるようでは、現在の党指導部への信認が損なわれてしまいます。

このように中国の事情を捉えた場合、北朝鮮国内で「何か」が発生するのは今年の12月以降になるというのが大よその見通しです。

 

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日本への影響

では、日本にはどのような影響があるでしょうか。

いずれにしても、北朝鮮の立場から考えれば、日本に対して武力攻撃してもメリットがありませんので、直接の攻撃に至ることはないでしょう。ただし、ICBMの発射実験によって、日本の領土になんらかの部品が落ちてくるとか、海上を航行中の漁船等が被害を受けることはあるかもしれません。

最も影響が大きいのは、現在約4万人いるといわれている在韓邦人の身の安全です。

特に首都ソウルは北朝鮮との国境から30㎞くらいしかありませんから、一気に迫撃砲を撃ち込まれたらあっという間に火の海になってしまいます。米朝開戦となれば、最初に狙われるのは間違いなくソウルですから、よほどの用務が無い限り、ソウルに滞在するのは避けるべきでしょう。

 

もちろん、ソウルだけではありません。いざ戦争が始まるとなれば、外国人だけではなく、韓国人でさえも韓国からの脱出を試みることになります。日本にいると見落としがちですが、韓国は北朝鮮以外に国境を接する国がありませんので、飛行機や船以外の方法で出国することができません。

空港や港はパニック状態に陥りますから、通常どおりにスムーズな出国は期待できません。不要不急の事情が無ければ、韓国への旅行自体を控えるのが賢明でしょう。