2020年のオリンピック開催を控えて、東京ではマンションの高騰が続いているようです。一時期のような中国人富裕層による高級マンションの買い占めは息をひそめたようですが、東日本大震災後の復興事業や、東京オリンピック関係のインフラ工事のために、人件費や資材費の高値が続いています。

その一方で、日本全国の自治体は「空き家」の増加に悩まされているという声も聞こえてきます。2015年には、空き家対策のための「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特措法)」が施行されましたが、解決には程遠いのが現状のようです。

なぜ、このように空き家が増えてしまい、問題が解決しないのでしょうか。

ここでは、空き家問題について、空き家問題とは何か、その原因と現状、対策をなるべくわかりやすくまとめました。

 

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空き家問題とは。その原因と現状

「空き家」とは、住んでいる人が居ない住宅のことです。つまり、空き家がが増える直接の原因「住宅の新築」と、「引越し」や「死亡」によって住む人がいなくなり、その後に入居する人がいないことです。(このほかに、統計上は「別荘」や「建設中の住宅」も空き家に分類されますが、今回は除外して考えます)

引越しで空き家になる場合を考えてみましょう。今まで住んでいた住宅が空き家になるのと同時に、転居先の住宅が空き家ではなくなるので、プラスマイナスゼロという収支になります。また、転勤族や進学就職という理由で、定常的に「引越し」は行われますから、ある程度は空き家が存在するのが普通です。

 

 

問題・原因は、使う当てのない空き家で家主が亡くなり、その後に適切な相続手続きが取られない場合等に発生します。子供たちが独立して、実家から遠く離れて働き、新しく家庭を築いている場合、親が亡くなって実家が空き家になる、というケースが典型事例です。このような場合でも、すぐに「売却」できれば良いのですが、なかなかうまく進まないことがあるのです。

よくある事例としては、「何人かの兄弟で相続したが、売却に反対する者がいる」というケース。誰が何をどれだけ相続するかで揉めてしまい、「争続」になってしまうことが少なくありません。

そもそも、親の物だと思っていた実家が、祖父から相続した兄弟たちの共有名義だということもあります。この場合、亡くなった親は物件の管理者であって、所有権は親を含めた兄弟に属しているため、建物の処分を自分たちだけで決める訳にはいかないのです。

また、相続する者全員が売却に合意していたとしても、すぐに売れるとは限りません。駅に近い中古マンションでも、築年数によってはなかなか売却できないのです。ある程度の地方都市だと、わざわざ中古の一軒家を買って住むという選択肢自体の優先順位が低いのが現状です。

 

解体にも大きな問題あり

それならば、一定期間売れない場合に建物を解体して「更地」にすればいい、と思うのですが、これも制度上の問題があって、なかなかうまく進まないのです。と言うのも、土地や建物には「固定資産税」が課税されますが、居住用の建物が立っている土地は「住宅用地の特例」という軽減措置が取られているからなのです。住宅の床面積によって、200平方メートル以下なら六分の一に、200平方メートルを超える場合でも三分の一に軽減されるのですが、更地にしてしまうとこの優遇を受けることができなくなるのです。

しかも、言うまでもなく解体には費用が掛かります。今では空き家対策として条件付きで補助金も出るとはいえ、いずれにしてもかなり大きな出費となってしまいます。しかし空き家も自分の資産であるのには違いありませんから、わざわざお金を出して処分するというのは、やはり抵抗を感じるのはやむ負えないところもありますが。

そのため売却できず、しばらく住む予定が無くても「とりあえず建物は残しておこう」と判断する人が多いのです。そして、何年も経つと雑草が生え、やがて建物の中にも入り込み、床が抜けて壁が剥がれて、、、遂には廃墟となってしまうこともあります。

 

このような状況になると、台風等の自然災害によって倒壊し、道路や周辺の住宅にまで被害が拡大する恐れがあったり、ネズミ等の棲家となってしまい、衛生上の害悪が広がる場合があります。また、草木が生い茂って景観が悪化するという問題もあったり、古い住宅が残り続けるために道路拡幅や都市開発が遅れるという弊害も発生しています。

そして本人にとっても、社会にとっても負の遺産以外の何者でもない状態となってしまうのです。

 

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空き家対策新法とは

このような状況に対応するため、空家対策特措法が制定されました。この法律によれば、自治体は空き家の状況を確認するために、敷地や建物の中に入って調査することができるようになりました。そして、そのまま放置し続けると倒壊する危険性があったり、ネズミなどの害獣の棲家になって衛生上有害となる恐れがあったり、著しく景観を損う状態になっている等の場合、「特定空き家」に指定します。

自治体は特定空き家の持ち主に対して、除去や修繕の「助言」や「指導」をすることができますし、それでも改善されなければ「勧告」し、持ち主が従わない場合は「代執行(自治体が取り壊す)」をすることもできるようになったのです。そして、勧告するのと同時に、固定資産税の軽減対象から外れますので、税制上は廃墟のような建物を放置するメリットが無くなり、デメリットが大きくなったのです。

 

ところが実際のところ、廃墟のようになってしまった建物の場合、そもそも所有者と連絡が取れないような状況になっていることが多く、固定資産税も滞納されていることが多いようです。このため、勧告しようにも相手には届かず、税金の納付書も宛先不明で戻ってきているのが現実のようです。

また、自治体が代執行する場合、当然その経費は所有者に請求するのですが、やはり請求書が所有者に届かないため、結果として税金で解体等掛かる全ての費用を負担する事態になってしまうことが多いのです。

 

まとめ

空き家の問題の根底には、中途半端でややこしい相続制度や資産課税制度があります。

相続手続きが適正に行われるようにすればもう少し売却できる家は増えますし、資産課税をもっと追求できるようになれば、解体費用を国が持つことも少なくなります。

何にしても現状のままでは全くよろしくないので、問題解決のためにもう少し本腰を上げる必要があるでしょう。