現在プロ野球ペナントレースにおいて、何らかの理由によりものすごく目立っている選手がいますが、日本ハムファイターズの大田泰示選手もその一人です。
大田選手は1990年6月9日生まれで、2017年が27歳のシーズン。
東海大相模高校3年時の2008年、ドラフトでソフトバンクと巨人から1位指名をされ、巨人が交渉権を得たことで入団。高校の偉大な先輩である原辰徳氏が監督をやっていたこともあり、本人にとってもむしろ万々歳のドラフトとなりました。
そんな大田選手も、昨年オフに巨人から日ハムに移籍するという人生の大転機を迎えたのですが、現在かなりの活躍を見せています。
というわけで、ここではその大田選手のトレードの理由と、現在の彼の活躍が確変なのか、それとも覚醒なのかを考察してみたいと思います。
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概要
大田泰示のトレードの理由
ドラフト競合1位から始まり、入団時の契約金は1億、推定年俸が1200万円、さらに純永久欠番とされていた松井秀喜氏の背番号55を与えられたということで、その並々ならぬ評価と期待感が感じられます。
しかしながら、2016年オフに
同僚の公文克彦と共に、
日本ハムの吉川光夫・石川慎吾
との2対2のトレードで巨人を去ることとなりました。
このトレードに対しては、疑問を感じている人も多かったようです。
あれだけ世間を騒がせ、チーム関係者やファンが期待していた選手なのにも拘わらず、いくら27歳という中堅の年齢に差し掛かっているとはいえ放出してしまうのか。
トレードを実行した理由は、大きく二つ挙げられます。
今後の覚醒の可能性は低いと見込まれていた
大田泰示選手はパワーこそありますが、対応力が不足していて緩急を付けられたり、落差ある変化球を投げられたりするとすぐにバッティングを狂わしてしまいます。
その結果、顔の高さの直球やベース手前でワンバウンドする球を振ったりすることもありました。
こんなことをやっていたら、なかなか成績も残りません。
実際、巨人通算では
436打数100安打9本塁打
で、
打率.229
となっています。
しかしながら、大田選手はルーキーイヤーの2009年に二軍で20本以上のホームランを打っています。
これはかなりとんでもないことで、この時点ではまだ多くの関係者が将来巨人を背負って立つ存在になると考えていました。
が、その当時からバッティングの脆さと粗さを課題としていました。
それが10年近く経っても全く改善されない。
となれば、もうこの先も改善するのは難しいのではないか、と考えたわけです。
トレード相手に魅力を感じた
これもあるでしょう。
トレード相手の一人である吉川光夫選手は、近年の成績こそあまり振るいませんが、2012年には防御率1.71という素晴らしい成績で最優秀防御率に輝いています。
これだけのポテンシャルがある選手であれば、近年あまり良くなくても今年は復活するかも知れない。
と考えることはできます。
しかも近年良くないと言っても、ローテーションの4番手以降なら任せられるくらいの成績ではあるので、部外者から見たらむしろ大田とは不釣り合いなんじゃないか、という印象すら感じさせられるところはありました。
大田選手ともう一人のトレード要因である公文選手も、一軍での実績はないに等しいです。ですが日ハム側のもう一人の要因の石川選手と、年齢的にも過去の二軍の実績的にもかなり似通っているので、こちらについてはほぼ平等と言えるでしょう。
となると、結局は大田対吉川で天秤に掛けることとなり、そうなるとやはり吉川選手の方が魅力に感じるだろうと思います。
現在の大田泰示は確変か覚醒か
ところが日本ハムに移籍して初めてのシーズンの5月28日現在、太田選手はかなりの活躍をしています。
これまでプロ入り通算ホームランが9本だったのに、早くも6本を打ってしまいました。
まだ100打席しか立っていないのにこれなので、キャリアハイどころか、今シーズン中にこれまでのホームラン数を塗り替えるのは時間の問題だと思われます。
しかしながら、この活躍に対して
「どうせ今だけですぐに落ちる」
と考え、確変でしかないと見ている人もいます。
確かに、それまで全く実績のない選手が突如にして別人かと見紛うほどに打ちまくり、その後全く打たなくなるという、まさにスロット等で「確変に入った」と言われている通りの状態になる選手はたくさんいます。
実際のところ、この大田選手の今の活躍は確変なのでしょうか。
それとも覚醒なのでしょうか。
根本的なバッティングは変わっていない?
確かに、今のところはかなり結果を出していますし、実際にバッティングの内容もしぶとさがあって良い感じです。
しかしながら、その根本的なバッティング内容はあまり変わっていません。
これはどういうことかというと、弱点を克服したわけではないのです。
つまり、今は調子が良いからバランス良く打てているが、調子が下がったらまたとんでもないボールを空振りしたりするようになり、打てなくなるかも知れない、ということです。
ですから、ただの確変だと言っている人の考えもよく理解はできます。
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感じ取られるもっとも大きな変化
しかしながら、大田選手は巨人時代とは明らかに違って見えます。
何が違うかと言えば、その野球に対しての向き合い方です。
巨人時代は、プレッシャーと、雑音がありました。
プレッシャーというのは、周りからの期待に応えなければならない、という気持ち的な圧です。
しかも、巨人では競争が激しいこともあって、少し結果が出せないとすぐ使ってもらえなくなり、また二軍行きになってしまいますから、結果に追われる圧も強かったでしょう。
雑音というのは、ファンや部外者の失望や非難の声だけではなく、コーチや関係者達の様々な声です。
彼らもこの選手を育てなければ自分たちの責任にもなるという気持ちから、より一生懸命に助言したりします。
これが逆に、選手を悩ませることになります。
こういったプレッシャーと雑音というのは、もちろん日本ハムに移籍してからもなくなることはありませんが、巨人時代と比べたらかなり減っていますし、明らかに配慮もされています。
栗山監督自身、ここにこそ大田泰示覚醒の鍵があるのだろうと考えているように伺えます。
それは
・髪型を自由にさせている
・2割を切っても使い続ける
・技術的なことは何も言わず、「伸び伸びやってほしい」「野球を楽しんでほしい」と語るのみ
といったところに表れていますね。
とにかくプレッシャーと雑音から大田選手を開放し、彼本来の打撃をさせる。
それだけで、そこそこやるんじゃないかと考えているのでしょう。
事実、現在の好調はその栗山監督の「環境作り」に起因していると私は思っています。
伸び伸びと楽しくできる環境を与えることによって気持ちに余裕が生まれ、自分のバッティングの状態を冷静に見つめることができます。
彼は今でもたまにはっきりとわかるボール球を振りますが、とんでもないボール球を振ることはほとんどありません。
ボールに対して食らいつく姿勢が明らかに違うのに、昔ほどボール球を振らなくなったというのは、やはり集中力が研ぎ澄まされているからでしょう。
ただただボールに食らいつこうという余裕のない精神状態では、とんでもないボール球にも手を出してしまいますからね。
もちろんバッティングが根本的に変われば対応できるでしょうが、変わらなくても大田選手の場合は精神状態の改善だけでも十分な対応力を見せているのです。
今後の予想
現在の大田選手のバッティングというのは、太田選手の本来の実力が発揮されているだけです。
つまり、過去でも環境さえ合えばこのくらいは確実にやっているはずです。
恐らく、今くらいのペースで打ち続けるのではないでしょうか。
打率は.200~.250、ホームランは15~20打席に1本くらいでいくと思います。
ですから終わってみればシーズンで20本は打つと思いますが、大谷選手が戻ってきた後に打率が下がってくると恐らく岡選手との併用になるので、そうなるとホームラン20本は厳しくなるかも知れません。
とはいえ、これまでのキャリアを考えたら飛躍的なシーズンになることは、間違いないでしょうね。
また、環境が合って気持ちに余裕が生まれることで、技術も伸びる可能性があります。
言うまでもなく技術が伸びれば、成績もさらに伸びるでしょう。