2017年10月27日のインタビューでユンケル欧州委員長の特別顧問を務めるキャサリン・デー氏が述べた内容によると、英EUの関係はノルウェー・モデルで合意するだろうとのことでした。

イギリス自身は新しいモデルを要求していますが、それに関しては否定的な意見を述べたうえで、ノルウェーやカナダと結んでいる通商関係をモデルにほんの少し修正を加えたもので合意するだろうという見解を述べました。

今回のインタビューで出てきたノルウェーモデルとはいったいどのようなものなのでしょうか?その内容を簡単に、わかりやすく解説していきたいと思います。

 

ノルウェーモデルとは?

ノルウェーはEU28ヶ国+3ヶ国にまたがる欧州経済領域(EEA)に参加している国であり、欧州単一市場にアクセスする権利を得ています。また、英国が離脱する際に争点となった「移動の自由」もここには含まれています。

その代わり、EU立法への参加権がないままEU法令及び関連法令に束縛されることになります。更にEU予算への拠出金をメンバーでもないのに払わされることになるのです。

 

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このようにメリットだけでなく決して軽視できないデメリットが伴っているため、過去2回行われたEUへの参加の是非を問う国民投票では反対派が勝利し、EUへの参加は見送られる形になったものの、票差自体は僅差でした。

しかし、近年ではノルウェー国内の反対派はかなり増加しており、現在投票が行われたとすれば圧倒的多数で反対派が勝つとも言われている状況です。

昨年6月に行われた世論調査によれば、約70%の人々がEU加盟に反対の意を示しています。その理由はノルウェー独自の文化や慣習を保つこと。また貿易、産業分野への利益が十分に確保できないなどといったことが挙げられます。また、EUそのものへの懐疑的な見方も少なからずあるようです。

ですから、ノルウェーの世論の現時点の見解としては

「EU非加盟で正解だった」

となっているわけですね。

であれば、イギリスがノルウェーのようなEUとの関係をイメージするのはごく当然のことであると言えるでしょう。

ただし、イギリスはこのモデルには耐えられないとも言われています。

それは、やはり欧州単一市場へのアクセス権と引き換えになる不利な条件によるものです。では、なぜノルウェーはその不利な条件を受け入れているのでしょうか。

 

ノルウェーがEU非加盟を望む理由

ノルウェーが欧州で独自路線を貫いていけるのは石油・天然ガス資源があるためです。そのおかげでノルウェーは国民の豊かな暮らしを維持できているのです。

ただし、資源というものは有限です。それが無くなった時にどうするべきかという対策をノルウェーは打ち出すことが出来ていません。ですから、そうなった時にEUに加盟していないことがどう影響するのか懸念材料ではありますが、この豊かな資源こそがノルウェーがEUに非加盟でいることを望む理由の一つであるのには違いありません。

また、ノルウェーは愛国心が強く、国民一人一人が国のアイデンティティを守ろうという思いが強い国です。ノルウェー人は長く支配された歴史を持ち、やっと20世紀に入って独立することが出来た国です。

だからこそ、どこかの支配下に置かれるということに国民が耐えられないと言われています。愛国心が他の欧州の国より強い理由は歴史に答えがあるというわけです。

 

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最後に(個人的見解)

多くの意見ではイギリスはノルウェーモデル路線で行くだろうと言われていますが、やはり争点となるのは「人の移動の自由」であると私は考えています。

1国として独立するために離脱を選んだにもかかわらず、相変わらずEUの法にも縛られなければならなくなるとなれば、英国側としては納得がいかないでしょう。

今回のインタビューではイギリス側の意見は聞けていないので、今後どうなるかはまだ未定ですが、ノルウェーモデルの可能性が高いといえど、私はイギリスがこの条件を受け入れるとは到底思えないのです。拠出金に関してもイギリスの納得のいくものではないでしょう。

 

しかしその一方で、イギリスも欧州単一市場へのアクセスが出ないと輸出産業に大きな打撃を与えることになるのも事実です。それを考えれば不利な条件も多少飲まなければ、EUとの交渉は全く進まないと言ってもいいでしょう。

今になって離脱を取り消すという選択肢もあるという意見も見かけますが、国民投票で決まったことは今更覆すことも出来ないと思われます。だからこそ、離脱した後にどうするべきかという今後の交渉にかかってくるのでしょう。

 

イギリスのメイ首相は国内をまとめる役割とEUとの交渉を進める役割を担い、とても大変な状況にあると推測されます。今後の進退に関してもたびたび危ういとの報道がされていますが、現状彼女以上の適任はいないでしょう。

ノルウェーモデルはかなりイギリスにとって不利な条件である以上、彼女はそれを阻止するべく動くはずです。だからこそ英国とEUはどのような関係に落ち着くのかまだまだ先行きが見えないという私の考えです。

交渉終了期限まで1年と少し。

その間にEU側のいうようにノルウェーモデルで決まるのか。それとも英国の主張をEUが認めて新たなモデルを作ることになるのか。

果たしてどうなるのでしょうか。