アメリカのトランプ大統領が、就任後初めてのアジア歴訪で二週間ほど外遊しています。この外遊は、APECとASEANの首脳会議という大きな仕事があったり、北朝鮮へのけん制という意味合いもありますが、元が商売人のトランプ大統領にとっては「貿易不均衡を解消する」という大きなテーマがあるようです。
つまり、アメリカが抱える膨大な貿易赤字を少しでも解消したいという思いがあって、主に日本と中国で行われる首脳会談では、そのことをメインテーマとしているようです。
ニュースなどでもよく耳にする「貿易赤字」とは何なのか。
また、貿易赤字が取り上げられるときマイナスイメージがつきまといますが、実際のところどうなのでしょうか。
貿易赤字になったら、日本にとって問題なのでしょうか。
そこで今回は、貿易黒字と貿易赤字の特徴、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく解説していきたいと思います。
輸出と輸入の差額が貿易収支
「貿易収支」とは、ある国と他の国の間での「輸出量(輸入金額)」と「輸入量(輸出金額)」の差のことです。輸出の方が輸入よりも多ければ「貿易黒字」で、逆に輸入の方が輸出よりも多ければ「貿易赤字」と言います。
モノがたくさん出ていくのがなぜ黒字なのか、それでは逆のような気がするかも知れません。しかし考え方としては
「輸出することによってモノが売れて外貨が手に入り、輸入する際にはモノを買って外貨を出さなければならない。」
という状況なので「黒字」になるのです。
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貿易黒字の特徴
以下、ここでは分かりやすく日本とアメリカの関係で説明することにします。
まず日本にとって貿易黒字、アメリカにとって貿易赤字となる要因の大部分は、為替レートの円安ドル高にあります。
円安ドル高とは、例えば、1ドル=80円の状況から1ドル=100円になる、ということです。1ドルが、80円から100円に値上がりする、つまり円の価値が下がってドルの価値が上がることを指します。
ですから円安になれば、日本からしたらアメリカ製品が割高になり、アメリカからしたら日本製品が割安になります。このため、日本としては円安になると貿易黒字が進むことになります。
貿易黒字が進むと、製品がよく売れるようになる上に国外からお金が入って来るわけですからどんどん景気が良くなっていきます。反対にアメリカとしては自国の製品が売れず、景気が悪くなっていきます。
ですから、貿易黒字は自国だけみれば完全に喜ばしい状況(ほぼメリットしかない)なのです。
しかしながら、これが極端になるのはよくありません。
貿易黒字というのは相手国の犠牲の上に成り立っているわけですから、当然ですよね。
「もっとアメリカ製品を買ってくれ」という政治的な圧力も強まり、過去に日米貿易摩擦が大きく問題となっていた頃には、アメリカで日本車が叩き壊されるようなパフォーマンスまで発生していました。
ですから、ちゃんと相手国のことも考えないと、国同士の間で様々な問題が発生するのです。
さらに海外の圧力の結果、その反動で一気に円高が進むことになります。
そうなると貿易収支はいきなり悪くなるので、国全体に不況のムードが漂い始め、負のスパイラルに陥るという危険性があります。
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≪参考記事≫日米FTAとは。意味やメリット・デメリットを簡単に分かりやすく
貿易赤字の特徴
では貿易赤字はどうかと言えば、貿易黒字の真逆になります。
つまり、自国だけ見ればほぼデメリットしかないと言っても過言ではありません。
特に、日本の場合は国内で資源の産出がほとんど無いため、鉄などの原材料となる鉄鉱石を海外から輸入して、それを鉄板や自動車に加工して付加価値を生み出し、その製品を輸出することでお金を稼いでいます。※ちなみに自国にない製品については安く買える円高ドル安の方が日本としてはお得になります。
もし、鉄鉱石の輸入金額と自動車の輸出金額が同じだったら、日本は世界の中でまったく稼げていないのと同じになってしまいますし、それが赤字だったら、、、どうやって食べていけばよいのでしょうか。もう貿易しない方が良いということになってしまいます。
そう考えると、過去にアメリカ人がブチ切れていた気持ちも十分理解できると思います。
ちなみに、輸出が減る原因を考えるとどうでしょうか。
もしかしたら日本以外の国が、もっと良い製品やもっと安い製品を輸出しているため、その分だけ日本製品が売れなくなっているのかもしれません。つまり「貿易赤字」は、それ自体が問題となる場合だけではなく、その原因が深刻という場合もあるのです。
恐ろしいことですね。
ただし、貿易赤字が必ずしも悪いかと言えば、そうとも言えないこともあります。
たとえば、東日本大震災の後など、国に必要なものがなく必要なときはどんどん輸入するのは当たり前なので、そういった場面であれば例外で、貿易赤字が大きいほど再建が進んでいる、という観方はできますよね。
それでもメリットとは言い難いですが。
まとめ
貿易黒字は基本良いこと、貿易赤字は基本悪いことなのですが、たとえ貿易黒字であっても以下のようなデメリットが出てきます。
・大幅な貿易黒字が続けば、国際社会での批判を浴びやすい(貿易摩擦)
・貿易黒字は円高を招き、円高が進むと産業の空洞化に繋がり、国内で失業が増える(反動の問題)
ただ一方で、貿易赤字にメリットは基本的にありません。
最後に少しおまけですが、一つ貿易黒字の例を挙げます。
日本の場合、戦後しばらくは借金を抱えながらも国内の産業を育成し、奇跡的な復興を遂げた後は自動車などの輸出によって大幅な貿易黒字を獲得しつづけました。
ところが、米国からの圧力が強まったり、東日本大震災以降は原発を停止したために原油を始めとしたエネルギーの輸入が増え、貿易赤字に転落。その後は徐々に赤字幅を縮小して、四半期単位では貿易黒字となることもあります。
一方、中東の産油国には莫大な資源が眠っていて、それを輸出し続けることができますから、常に貿易黒字です。ところが、国内には石油以外の産業がありませんから、産業の空洞化も起こりません。そのこと自体を問題ととらえて、最近では国内での産業育成に熱心な王族が表れて、活躍が伝えられています。
ニュースなどで貿易収支のことが取り上げられた際には、その背景にまで踏み込んでいるかどうか、しっかりチェックしたいところですね。
輸出入に伴う赤字、黒字仕組みはわかりますが、国民生活への影響がどのように関連し、影響を及ぼすか今一解りません。赤字は基本的にはメリットなし、と書かれていますが、生活者にとって輸入超は安いものが手に入りメリットと思われます。その関連の日本の産業は打撃を受けます。それは仕方がないことで、その産業は潰れるか、技術革新して生き残るかしなければらなりません。また、それらの産業は途上国等へ譲る必要があります。日本やアメリカの経済はその変革時にあります。一方、中国は過去50年強の経済停滞で先進国との間で100倍強の経済格差がありました。それが急速にちじまり近年、それが対等になる状況です。一部の産業では途上国への移転が始まっています。これからは弱い産業は途上国等へ譲り経済になると思います。従って赤字はメリットの面が大きいと思います。