2017年10月29日~31日にかけてフィリピンロドリゴ・ドゥテルテ大統領が来日されました。今回の来日は昨年10月に引き続き2度目です。

滞在中は安倍総理、河野外相との会談が行われて今後の日本・フィリピン関係や11月に行われるASEAN関連首脳会議の成功に向けての話し合いが行われました。その内容はどんなものだったのでしょうか。

また、ドゥテルテ大統領の日本と中国に対しての態度の違いが激しいと話題になっていますので、その辺りに迫って参りたいと思います。

 

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日本・フィリピン関係

30日に行われた河野外相との会談では、同年8月にマニラを訪問した際の謝意が伝えられました。

そして、2017年5月23日以来ミンダナオ島で「マウテグループ」というイスラム関係の武力勢力による不法占拠からの解放宣言に対する敬意と、その戦いへの全面支援を表明しました。解放後の復興支援も約束したことで、日本側のフィリピンとの友好関係を促進していきたいという意図がうかがえます。

また、北朝鮮問題に関してもフィリピン側も危機感を感じており、

日本を全面的に支持して互いに連携し合っていく

という旨の約束をされました。

ASEANとしては北朝鮮への圧力に対しては消極的な姿勢をとっていますが、フィリピンという国としてはより一層の圧力が必要と考えているようです。

このことからも北朝鮮に対してのASEANの姿勢も一枚岩ではないということがこの会談ではっきりしたと言えるでしょう。

また、同年10月28日(現地時間だと27日)にニューヨークで開かれた国連総会第一委員会で日本が提出した核兵器廃絶決議案に対して、フィリピンからの支持に対する謝意も伝えられました。

ちなみにこの議案に対して賛成派は144ヶ国、反対派は4ヶ国(ロシア、中国、シリア、北朝鮮)となっています。ちなみに共同提案国は米国、英国であるため核兵器禁止条約よりもより一層意義のある核兵器廃絶に向けた取組みであると言えるでしょう。

このようなフィリピン側の姿勢をみると、フィリピンは日本との関係をより親密にしていきたいという姿勢が伺えます。

 

日本のフィリピンに対する支援

30日に日・フィリピン首脳会談が行われた中で円借款の供与に関する事前通報が行われました。今回の主な計画は以下の2つになります。

 

① 「マニラ首都圏地下鉄計画(フェーズ1)(第一期)」(供与限度額1,045億3,000万円)

こちらはマニラ首都圏の地下鉄整備計画です。マニラ首都圏では深刻な渋滞が起こっており、大気汚染の問題が深刻化しています。日本はそれらの改善のための投資として上記の額をフィリピンに供与して、経済成長の手助けをしていく計画です。

 

② 「幹線道路バイパス建設計画(III)」(供与限度額93億9,900万円)

こちらはマニラ近郊にある中核都市のプラリデル市とルソン島を結ぶ主要な幹線道路をつくるという計画です。日比友好バイパスをつくることで渋滞緩和・輸送能力の向上を図る目的があります。更にこの計画を通じた経済成長も期待できるでしょう。

 

この計画では①は40年、②は30年かけてフィリピンは日本に借りたお金を返していく事になります。しかし、経済成長促進されることで日本の投資した額以上の利益が生まれることは間違いないでしょう。年利が0.3%あるので日本側としても意味のある投資となっています。こうした途上国の支援を通じて日本の経済成長にも繋がる良い取組みであると言えるでしょう。

 

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ドゥテルテ大統領は親日でも中国は嫌い?

今回の訪日の様子を見る限りフィリピンのドゥテルテ大統領は日本とより親密な関係を築いていきたいと感じている様子がうかがえます。それが伺えるのが中国への態度と日本への態度の違いです。

日本を訪れる直前に中国を訪問したドゥテルテ大統領は、習近平国家主席の前ではガムを噛む、居眠りをするなどととても敬意を持った態度ではありませんでした。しかし、日本の天皇・皇后陛下を表敬された際にはきちんと正装をし、お会いする前には緊張した様子であったという報道がされています。

そして、実際にお会いした後も非常に礼儀正しく接しており、とても同一人物の行った行動とは思えない態度の違いに正直私も驚きました。

 

まとめ

ドゥテルテ大統領のフィリピン国内での支持は落ち込んでいる様子ですが、フィリピンそのものの株価は上がっており、他のアジアの国々と同じように経済成長著しい様子が伝わってきます。フィリピン側も日本との友好関係を重要視してくれているからこそ、日本側もフィリピンとより一層親密な関係を築いていくべきだと私は考えています。

日本は残念ながら近隣諸国とはあまり仲がいいとは言えません。もし、そこに決定的な亀裂が生じてしまったら、日本には味方となってくれる国がどの程度いるのでしょうか。米国との関係も親密ですが、距離としてはとても遠い関係です。だからこそ、近くの国々であるASEANとの関係を今後一層強化していく必要があると思います。

アジアはEU以上に一枚岩ではいかない地域です。それぞれが別の文明、文化、言語、宗教を持っています。それらを理解し、関係を築いていくのは統合という形では不可能でしょう。だからこそ2国間ベースで関係を良好に保っていくべきではないでしょうか。

今後外国人労働者が必要となった時、多く来るのはおそらくASEAN地域の人々です。外国人労働者としてやってきた人々が日本の地域になじめるような制度を今のうちから整えておく必要があるでしょう。そのためには日本国民がASEAN地域のことをより一層理解していく必要性を私は訴えていきたいと思います。