2017年10月3日現在、まもなく衆議院議員選挙が行われますね。

衆議院議員選挙の場合、投票所に行くと投票用紙を二枚受け取り、投票しますが、都道府県や市町村の議員選挙では、投票用紙は一枚です。

どうしてこのような違いがあるのでしょうか。

ここでは選挙制度について、できるだけわかりやすく解説してみたいと思います。

 

どのような選挙制度があるのか

衆議院議員選挙の選挙方式「小選挙区比例代表並立制」で、比例代表については「拘束名簿式比例代表制」となっています。と言われても何が何だかよく分からないかもしれません。

まず確認しておかなければならないのは、

選挙制度には「小選挙区制」「大選挙区制」「比例代表制」の3つの制度がある

ということです。それぞれの制度に一長一短の特徴があります。

 

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小選挙区制とは

一つの選挙区から、一人の候補者を当選させる制度です。例えば、現在の東京都は25の選挙区に分かれて、それぞれの選挙区から一人づつ、合計25人を小選挙区から選出します。

小選挙区制では、政党の数(立候補する人数)が少なくなるため、大きな政党が有利になり、二大政党制に近づいていくという特徴があります。

メリットとしては、選挙区が狭いエリアになりやすいので、立候補者と有権者の距離が近くなることが挙げられます。

それに対してデメリット(問題点)は、そもそも立候補する人数が少なくなるために有権者の多様な意見を反映できず、両極端な意見に振れやすくなってしまうことが挙げられます。また、二大政党制が根付くまでの間は死に票(落選者への投票)が多くなる傾向があります。実際、2005,2009,2012,2014年の衆議院議員選挙では、与党*の得票率は50%以下にも関わらず、2/3以上の小選挙区で議席を確保(当選)しています。

ただし、人口の規模に応じた選挙区を設定しやすいため、一票の格差が拡大しても修正しやすいという点が大きなメリットになります。

* 与党とは政権を担当している政党のことです。今で言うと自民党になります。

 

大選挙区制とは

一つの選挙区から、複数の候補者を当選させる制度です。かつて、衆議院議員選挙では一つの選挙区から3~5名の候補者を当選させる制度だったため「中選挙区制」と呼んでいましたが、1994年の公職選挙法改正により廃止されました。

大選挙区制は、小選挙区制と反対の特徴があり、比較的小さな政党でも当選しやすくなります(定数[当選者の数]が1の選挙区では、当落ラインは50%、定数2なら33%、定数3なら25%と、定数が増えるごとに当落ラインが下がるため、小政党でも当選しやすい)ので、多用な民意を反映しやすいのがメリットと言われています。

反対に、議会において過半数の議席を確保したい政党は、一つの選挙区に複数の候補者を擁立しなければならず、選挙運動も難しくなります。その結果として議会での過半数獲得が難しくなるため、政治的に不安定になりやすいのがデメリットです。

有権者の視点で考えると、小選挙区制よりも死に票が少なくなるのが大きなメリットになりますから、やはり民意が反映されやすい制度と言えるでしょう。

なお、参議院議員選挙は原則として都道府県を選挙区とする大選挙区制が導入されていますが、過去には一票の格差が6倍以上に拡大するなど、格差の拡大が問題となりました。最高裁判所の度重なる違憲判決や、ついには選挙無効の判決まで下されるなど、選挙制度としての根本的な問題が大きく炙り出されています。

 

比例代表制とは

選挙区の中での得票数に比例した議席を配分するのが比例代表制です。日本では、個々の候補者ではなく「政党」が立候補の単位になり、各政党が提出した「候補者名簿」から当選者が決定されます。衆議院議員選挙では全国を11の比例区に分け、参議院議員選挙では全国統一の比例区を設定しています。

メリットは、議席が各政党の得票数に比例して配分されますので死に票が少なく、民意が反映されやすい制度ということです。このため、議会では少数政党が多くなりますので、政治的には不安定になりやすいと言えます。つまり、大選挙区制の特徴が、より強く表れやすいのが比例代表制です。

参議院議員選挙のように全国統一の比例区なら一票の格差が無くなりますが、全国で選挙運動を繰り広げるためのお金が必要になりますので、資金力のある候補者(政党)が有利になってしまうというデメリットがあります。

 

≪関連記事≫一票の格差は違憲?重みの差を是正する解決策の問題点とは

 

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衆議院・参議院の制度内容

つまり、小選挙区制は大きな政党に有利で、比例代表制は小さな政党にもチャンスがありますので、

衆議院議員選挙では、この2つの制度をミックスした「小選挙区比例代表並立制」

を採用しているのです。また、比例代表は「拘束名簿式比例代表制」になります。

それに対して、参議院選挙では、「大選挙区・小選挙区比例代表並立制」

で、比例代表は「非拘束名簿式比例代表制」になります。

複数の精度をミックスする方法には「並立制」以外にも「併用制」というのもあるのですが、「拘束名簿式比例代表制」と「非拘束名簿式比例代表制」の違いと合わせて、それぞれの特徴を確認してみましょう。

 

大選挙区・小選挙区比例代表並立制と併用制の違いは

では、並立制と併用制を比較してみましょう。

簡単に言えば、

並立制は「大選挙区・小選挙区の結果に重点を置く場合」に採用

され、

併用制は逆に「比例区の結果に重点を置く場合」に採用

されます。

衆議院議員選挙の場合、有権者は小選挙区と比例区のそれぞれに投票し、集計後は、まず小選挙区の当選者が決定されます。小選挙区と比例区の両方に立候補している場合、小選挙区で当選した候補者は、比例名簿から除外されますが、小選挙区で落選した場合が問題になります。

小選挙区で落選した場合でも、有効投票の10%以上の票を獲得している場合、比例名簿で復活当選する可能性があるのです。このように、小選挙区で落選したのに、比例区で当選することを「復活当選」と言い、マスコミ等ではゾンビ議員などと呼ばれることがあります。

 

一方、併用制の場合は、まず比例区での獲得比率に応じて、政党の獲得議席数が決まり、小選挙区の得票に応じて政党内で誰を当選させるかを決定します。ただし制度の設計によって複雑になりやすく、有権者にとっては分かりづらくなるのがデメリットです。

例えば、ドイツで採用されている併用制では、小選挙区で1位になった候補者の政党が比例区で議席を獲得できなかった場合には「超過議席」を認めているため、あらかじめ定められた定数より多くの議員が選出されることもあります。非常に分かりづらい制度ですが、超過議席を認めない限り無所属の議員は立候補できなくなってしまい、これは参政権の侵害となってしまいます。ただ、定数が600程度の議会で、超過議席が100人以上発生しているようですから、日本の感覚では理解しがたいものがありますね。

 

拘束名簿式と非拘束名簿式比例代表制

拘束名簿式の場合は、政党が提出する名簿において、あらかじめ候補者名と当選順位を決めておきます。そして、有権者は「政党」に対して投票し、得票数に応じて政党が獲得した議席数を、名簿順位の高い候補者から割り振ります。(ただし、小選挙区にも立候補している場合、名簿には同順位で掲載しておき、選挙区での惜敗率で順位を決めることができます)

一方、非拘束名簿式の場合は、名簿では順位を決めずに候補者名だけを記します。そして、有権者が投票用紙に記入するのは「政党名」でも「候補者名」でも構わず、政党はその両方の合計票数を獲得します。その合計票数に比例した議席数を政党が獲得し、候補者が個々に獲得した票数の順に当選者が決定されます。

つまり、拘束名簿式の場合、有権者にとって当選させたい候補者がいても、政党が決定した名簿順で当選が決まりますので、人を選ぶのはなく、政党を選ぶ選挙となります。逆に、知名度が低くても優秀な学者や活動家等を議会で活躍させたい政党にとっては、名簿順で当選させることができるのがメリットです。

非拘束名簿式の場合はこれが逆に作用するため、有権者が当選させたい候補者がいれば、その人物を当選させることができます。

 

まとめ

どうでしょうか。複雑でわかりづらい選挙制度ですが、どの制度にも一長一短があり、バランスを取ろうとした結果として、ますます複雑になっていると言えそうです。

実際、なるべくわかりやすくしたつもりですが、わかりにくいところも多々あったと思います。

完全に理解しなくても良いので、黒字や赤線周辺などの基本的な部分は抑えておくようにしてください。

さりとて、日本の将来を決める大事な選挙ですから、まずは候補者の主張をしっかり理解して、最善の選択肢を選ぶように心がけましょう。