2017年9月24日のドイツの連邦議会(下院)選挙において五大政党以外の政党が94議席も獲得するという前代未聞の時代が起きました。その政党の名前は「ドイツのための選択肢(AfD)」です。

ここでは、このドイツの極右政党AfDが一体どんなものなのか、その台頭がEUや世界に与える影響について考えてみたいと思います。

 

ドイツにおけるAfD台頭の意味

今までのドイツの政治は五大政党によって守られてきました。与党が入れ替わることがあってもドイツの政治がうまく回っていたのはこれらの政党が互いに協力し合い、時にはけん制し合ってきたからです。

その均衡が今回の第3勢力の台頭によって崩され、ドイツの政治に暗雲が立ち込め始めました。ドイツのための選択肢(AfD)の最大の目標は「ドイツのEUからの離脱」です。彼らの政策方針は現政権の政策方針と正反対といっても過言ではないでしょう。

それだけに、彼らが力を持ってしまえばドイツが全く別の国に生まれ変わる可能性もあります。そうなればドイツだけでなくEUの在り方も変わることは間違いありません。それどころか存続すら危うくなると私は考えています。

今後のドイツだけでなく、EUの命運までも背負わなければならなくなったメルケル首相。彼女を追いつめた極右政党ドイツのための選択肢(AfD)とはどのような政党なのでしょうか?

 

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ドイツのための選択肢(AfD)とは?

今回の総選挙で極右政党が台頭したという新聞記事をよく見かけますが、私個人としてはドイツのための選択肢(AfD)が極右政党といわれることに疑問を感じます。

それは彼らの政党理念を知れば誰もが思うことでしょう。彼らは自党のことを反EU政党ではないと評していますし、移民の受入れも必要な事であるとしています。

ではなぜ外部から極右政党と評価されるのでしょうか。それは現与党の政策、すなわちメルケル首相のやり方に反する政策を唱えているためです。

特に難民の受け入れに関して寛容であるとされるドイツのやり方には反対しており、無制限に受け入れるのではなく数量制限を設けるべきであると主張しています。さらに、シェンゲン協定に関しても反対しており、各国での国境管理を復活させることを目標としています。実際に難民が欧州に押し寄せている理由もEUの国に入って申請が通ってしまえばドイツまで自由に移動できる権利を持てるからです。

ドイツに行く事を目的にしているにもかかわらず、EUと周辺国の国境の国が負担を強いられているのはシェンゲン協定があるからです。もし仮に国境管理を各国に戻せば難民がドイツに入ることも困難になり、EU全体の負担が減る事に繋がるというわけです。

難民問題に関しては私もメルケル首相が難民の受け入れに関して寛容な姿勢をとったことが原因で悪化したと感じています。そういった意味ではドイツのための選択肢(AfD)のこの政策はまともに思えます。

 

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ドイツのための選択肢(AfD)の理念

ドイツのための選択肢が目指すのはドイツの国家権力の回復です。

現状、EUという一つの共同体を目指すために国家の権利をEUに委譲している部分が数多く存在しています。それ故に国家の方よりもEUの方が優先される分野も存在しています。それが顕著に表れたのがギリシャ危機でしょう。

通貨統合を行い、ギリシャもユーロを導入していましたが1国の通貨でないために独自の金融政策や経済政策を行うことが出来ませんでした。そのため欧州の1国で起きた問題がEU全体の問題となり、リーダーであるドイツが大きな負担を負う羽目になりました。ドイツのための選択肢(AfD)はEUのためにこのような大きな負担をドイツが負わなければならない現状を打破したいと考えているのです。

EU域内では国によって大きな経済格差があります。その格差を是正するための基準は設けられているものの上と下の差はかなり大きいです。そうした経済的に弱い国のために経済が豊かな国が負担を負うことに不満を感じるのは自然な事でしょう。英国のEUからの独立の理由の一つにも挙げられていましたね。そういった考え方の政党がドイツでも出てきたということは、EU全体でも英国と同じような不満を抱えているという表れかもしれません。

 

以上のことからも彼らが極右政党であると断言するのは早計でしょう。彼らが望むのはEUを1つの国とするのではなく、もっと緩やかなつながりを持った共同体にするということです。その上で権限を各国に再び取り戻したいということです。

これは主権国家の人々からすれば当たり前のことなので、彼らの主張は十分まともであると言えます。

そこに来て、難民が流入し始めてから明らかに欧州の治安は悪化し始めているという状況に直面しました。特に生活に実害が出始めると、人々は大枠が見えなくなり、目先の問題を片付けたくなりがちです。だからこそ問題を起こしている難民をどうにかしたいと言っており、かつ主張もまともなドイツのための選択肢(AfD)に票が集まったのではないかと考えられます。

 

まとめ

ドイツのための選択肢(AfD)が議席を割いた獲得したと言っても与党になったわけではありません。大切なのは今後のドイツの政治においてどれだけ力を発揮できるかです。彼らが国民の期待通りの成果をあげることができれば、今後今以上に勢力を拡大する可能性もあります。

ドイツのための選択肢(AfD)が結成されたのは2013年です。たった5年でここまで台頭してきた政党ですから今後与党になる可能性も十分にあると言えます。しかし、もし本当にそうなった時にはEUの在り方が大きく変わる可能性は否定できないでしょう。EUは共同体とはいえドイツの影響力が大きいことは確かです。そのドイツが政策を転換すると言ったとき、他の国はどこまで対抗できるのでしょうか。

EU結成の当初の目的は欧州の資源を共同管理することで再び大きな戦争を起こさないことです。もしドイツのための選択肢(AfD)が与党になり、EUが解体なんてことになったらそれまでの欧州をまとめて来た努力が水の泡になってしまいます。

そうなれば、世界に与える影響は甚大ではなく、恐らく悪い方に転がってしまうのではないかと思われます。

そのような最悪の事態を防げるかは現与党及びメルケル首相の双肩にかかっています。今回の選挙をきっかけにドイツがどう変わっていくのか。今後も目が離せない状況が続きそうですね。